【登辞林】(登記関連用語集)


[せ]

占有 (1)民法上、自己のためにする意思で物を所持すること。占有者自らがなすもの(自己占有)の他、代理人による占有(代理占有)も認められる。(→自主占有)(→他主占有
(2)刑法上、物を現実に支配すること。自己のためにする意思を要せず、代理人によるものは含まれない。

占有回収の訴え 占有者がその占有を奪われたときに、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる訴え。占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人が侵奪の事実を知っていたときを除き、その特定承継人に対しては提起することができない(民法第200条)。占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない(民法第201条第3項)。

占有改定 民法上の占有権の承継方法のひとつで、代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思表示したときに、本人が占有権を取得すること。代理人の占有は、以後、代理占有となる。自己が占有している物の売主が、その物を買主のために保管したり、もしくは、そのまま買主から賃借したりした場合などに、買主は占有権を取得する。(→簡易の引渡し)(→指図による占有移転)(→現実の引渡し)(→自己占有

占有機関(→占有補助者)

占有権 民法上の物権のひとつで、自己のためにする意思をもって物を所持することにより取得する。代理人によっても取得することができる。

占有訴権 占有者が、占有の妨害の停止、占有の妨害の予防、占有物の返還、損害賠償等を、占有の訴えにより請求することのできる権利。

占有の訴え 占有者が、占有の妨害の停止、占有の妨害の予防、占有物の返還、損害賠償等を請求するため、提起することのできる訴えで、他人のために占有をする者も提起することができる(民法第197条)。「自己占有」「代理占有」「自主占有」「他主占有」いずれの占有者であっても、訴えの原告となりうる。「占有保持の訴え」「占有保全の訴え」「占有回収の訴え」がある。

専有部分 一棟の建物を構造上区分した数個の部分で、独立して住居、店舗、事務所等の建物としての用途に供することができるもののうち、規約により共用部分とされたもの(規約共用部分)を除く、区分所有権の目的となる部分(建物の区分所有等に関する法律第2条第3項)。ドア、窓、壁、床、天井などで区切られた内側の部分で、専用庭、専用廊下、バルコニー等は、共用部分となる。(→敷地利用権)(→分離処分の禁止

占有保持の訴え 占有者がその占有を妨害されたときに、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる訴え(民法第198条)。占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならず、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、提起することができない(民法第201条第1項)。

占有補助者 他人の占有を補助するに過ぎない者。一般に、店員等は占有補助者にあたり、店主の占有を補助するに過ぎず、店員等に占有権は成立しないとされる。「占有機関」ともいう。(→自己占有)(→代理占有

占有保全の訴え 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときに、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる訴え(民法第199条)。占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができるが、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない(民法第201条第2項)。

占有離脱物 遺失物、漂流物等、占有者の意思によらずにその占有を離れた物。

占有離脱物横領罪(→遺失物等横領罪) 

善良な管理者の注意 管理者の職業や社会的地位に応じて、社会通念上、通常期待される程度の注意。この注意義務は「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」とよばれる。例えば、建物を管理する者が、不動産業者、管理会社等、建物・不動産に関して専門的知識を有する者であれば、専門的知識を有しない者に比べ、より高度な注意を求められることになる。
債権の目的が特定物の引渡しであるとき(特定物債権)は、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない(民法第400条)。(委任の)受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う(民法第644条)。
無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を管理する義務を負う(民法第659条)ことの反対解釈として、有償で寄託を受けた者は、善管注意義務を負うとされる。管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは(緊急事務管理)、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない(民法第698条)ことの反対解釈として、通常の事務管理においては、善管注意義務が要求される。

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